不安の身体症状と、応急処置

心理相談室ちゃのまの杉田真也です。不安についてのコラム、第5回です。

「人前で発表するとき、急に心臓がバクバクして息苦しくなった」 「電車に乗っていると、めまいやふらつきが起きて倒れそうになる」 「外出前に突然、激しい腹痛や下痢、吐き気に襲われる」

このような突然の身体症状に襲われると、「心臓の病気かも」「このまま意識を失うのでは」と、さらに不安が膨らんでしまいますよね。

しかし、これらの症状は体が病気になったわけではなく、危機から身を守ろうとして引き起こされる「正常な生理反応」であることがほとんどです。

今回は、不安によって身体症状が起きる仕組みと、その場でできる3つの応急処置について解説します。

目次

1. 不安で身体症状が起きるメカニズム

前回のコラムでもお伝えした通り、不安を感じたとき、脳の警報機は身体に対して「戦うか、逃げるか(闘争・逃走反応)」の準備を指令します。

つらい身体症状は、実はこの「非常事態モード」の現れなのです。

動悸・息切れが起きる理由

危険から全速力で逃げたり、相手と戦ったりするためには、全身の筋肉に大量の酸素と血液を供給する必要があります。そのため心臓はポンプ機能をフル回転させて血液を送り出し、肺は必死に酸素を取り込もうとします。これが動悸や息切れの正体です。

めまい・ふらつきが起きる理由

呼吸が激しくなると、酸素を吸いすぎる一方で、二酸化炭素を吐き出しすぎてしまう状態(過換気)が起きます。実は二酸化炭素には脳の血管を広げて血流を保つ働きがあるため、これが減少しすぎると脳の血管が一時的に収縮し、軽い酸欠状態になります。その結果、頭がぼーっとする、ふらつく、目の前がチカチカするといった感覚が生じます。

腹痛・吐き気・下痢が起きる理由

危険に直面したとき、脳は生命維持を最優先にします。そのため、消化活動にエネルギーを使うのをストップし、胃腸への血流を減らします。さらに「消化管の中身を早く体外へ排出して身軽になろう」とする自律神経の働きにより、急激な腹痛や下痢、吐き気が引き起こされるのです。

2. 不安が高まったときに試したい「3つの応急処置」

身体症状そのものが直接命を脅かすことはありません。それよりも「この症状は危険だ」と焦ってしまうことで、さらに不安が増大する悪循環を断ち切ることが大切です。

激しい不安や身体症状を感じたら、次の3つを試してみてください。

①「これは脳の防衛反応だ」と思い出す

「いま起きているドキドキや腹痛は危険な病気ではなく、脳が自分を守ろうとして鳴らしている警報(身体反応)だ」と心の中で確認します。メカニズムを理解しているだけでも、パニックを防ぐ助けになります。

② 息を「長く・ゆっくり吐く」ことに集中する

不安を感じているときは、無意識に息を吸いすぎてしまいがちです。まずは「吐くこと」に意識を向け、息を細く長く、お腹の空気をすべて吐き切るイメージでゆっくり息を吐き出してみましょう。息を吐くことで副交感神経(ブレーキ)が働きやすくなります。

③ 意識を自分の「外側」に向け直す

心臓のドキドキや頭のクラクラに意識が向かいすぎると、「このままどうにかなってしまうのでは」と先のことを考えて、さらに不安が大きくなってしまいます。

そんなときは、意識を自分の体の内側から、今いる場所(五感で感じられるもの)に向け直してみましょう。

例えば、以下のように「今、ここにあるもの」に意識を向けてみます。

  • 目に見えるものを探す(例:部屋の中にある青いものを3つ探してみる)
  • 聞こえる音に耳をすます(例:遠くの車の音、エアコンの送風音を聞いてみる)
  • 手で触れている感触を確かめる(例:冷たい壁や机、着ている服の素材に触れてみる)
  • 好きな匂い・身近な匂いを嗅いでみる(例:ハンドクリームや精油、お気に入りの紅茶やコーヒーの香りを嗅いでみる)
  • 口の中の感覚に集中する(例:飲み物をひとくち含んで、味や喉を通る感じを味わってみる)

「これを完璧にやらなければいけない」という決まりはありません。

ご自身にとって一番やりやすい方法で、五感のどれか一つにふっと意識を向けてみるだけで大丈夫です。

まとめ:一人で抱え込まずにご相談ください

激しい動悸や体の違和感を感じたとき、まずは今回ご紹介した応急処置を試してみてください。

不安の出方や身体症状のパターンは一人ひとり異なります。もし「一人では対処が難しい」「どうしても不安症状が続いてしまう」と感じられる場合は、いつでも心理相談室ちゃのまにご相談ください。

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