認知行動療法のよくある誤解 

最近「認知行動療法」という言葉を耳にする機会が増えた気がしませんか? ストレスとの付き合い方や、心のセルフケアに関心がある方なら、一度は聞いたことがあるかもしれませんね。

でも、「認知行動療法」って聞くと、なんだか「もっとポジティブに考えなきゃ!」とか「今の考え方は間違ってるから直しなさい!」って言われるような、ちょっと厳しいイメージを持っていたりしませんか?

実はそれ、カウンセリングの場でもよく耳にする、よくある誤解なんです。

目次

  1. ◆ポジティブ思考の押し付け?いいえ、そうじゃありません
  2. ◆ 考えを変える? いいえ、「選択肢」を増やすんです
  3. ◆「認知の歪み」って言葉、ちょっと気になりませんか?
  4. ◆ まとめ:自分を理解し、可能性を広げる旅へ
  5. ◆ もし、もう少し話してみたいと感じたら

◆ポジティブ思考の押し付け?いいえ、そうじゃありません


認知行動療法の一番大切なポイントは、無理やりポジティブシンキングを強要するものではない、ということ。これは、専門家としてまずお伝えしたいことです。

もちろん、楽観的な視点を持つことが助けになる場面もあります。でも、辛い時に無理に「大丈夫、すべてはうまくいく!」なんて思おうとしても、余計に苦しくなっちゃうことだってありますよね。

認知行動療法は、「こう考えなさい!」と型にはめるのではなく、「今、自分はどんな風に考えているんだろう?」 って、ご自身の心の動きに、まずは優しく気づけるようになることを大切にするんです。まるで、自分の心の観察者になるようなイメージですね。

◆ 考えを変える? いいえ、「選択肢」を増やすんです


そしてもう一つ。「考え方を変えなければならない」というものでもありません。

私たちが何か出来事に遭遇したとき、無意識のうちに特定の考え方や反応をすることがありますよね。それは長年の経験の中で、自分なりに身につけてきた、いわば「思考のクセ」のようなもの。

認知行動療法は、その「クセ」が良いとか悪いとかジャッジするのではなく、「もしかしたら、こういう考え方や捉え方もあるかも?」「こんな行動を試してみるのもアリかも?」 という、新しい選択肢(レパートリー)を、セラピストと一緒に探していくことを目指します。

例えるなら、いつも使っている道が工事中で通れなくても、別の道を知っていれば焦らず目的地に向かえますよね。それと同じで、考え方や行動の「引き出し」が増えることで、ストレスを感じる場面でも、少しだけ楽になったり、しなやかに対応できるようになったりする。そんなお手伝いをするのが、認知行動療法なんです。

◆「認知の歪み」って言葉、ちょっと気になりませんか?


認知行動療法について調べていると、「認知の歪み(ゆがみ)」という言葉に出会うことがあります。なんだかちょっとドキッとする、強い言葉ですよね。「私の考え方は歪んでるの?」なんて、不安に感じてしまう方も少なくありません。カウンセリングの場でも、この言葉について質問されることは多いです。

実は、この「歪み」という表現は、その言葉が持つネガティブな響きから、誤解を招きやすいという指摘もあり、私たち専門家の間でも、最近ではより丁寧な言葉で表現しようという動きが広がっています。

なぜなら、私たちが持っている特定の考え方のパターンは、決して単純に「歪んでいる」「間違っている」と断定できるものではないからです。

それはむしろ、これまであなたが一生懸命生きていく中で、その時々で必要があって身につけてきた「考え方のクセ」や「思考のパターン」 と言えるかもしれません。

例えば、周りの顔色をうかがう考え方のクセは、もしかしたら過去の人間関係の中で、自分を守るために必要だったのかもしれません。「きっと失敗する」と考えてしまうパターンは、かつて大きな挫折から心を立て直すために役立ったのかもしれません。

このように、一つ一つの考え方のパターンには、その人なりの理由や背景があることが多いのです。

ですから、それを単純に「歪み」と呼んで否定的に捉えるのではなく、「長年連れ添ってきた、自分なりのパターンなんだな」「あの時は、この考え方が私を助けてくれたのかもしれない」と、まずはその成り立ちに敬意を払い、理解しようとすることが大切だと、私たちは考えています。

もちろん、そのパターンが今の自分を苦しめていたり、生きづらさにつながっていたりするのであれば、それに気づき、より柔軟で、今の自分に合った新しい考え方や行動の選択肢を増やしていくことは、とても意味のあることです。

認知行動療法は、まさにそのお手伝いをするための、具体的で優しいアプローチなんです。特定のパターンを「悪いもの」と決めつけるのではなく、その成り立ちを理解した上で、より楽に生きるための新しいスキルを、安全なペースで一緒に練習していく。そんなイメージを持っていただけると嬉しいです。

◆ まとめ:自分を理解し、可能性を広げる旅へ


認知行動療法は、決して「こうあるべき」と押し付けるものではありません。

自分の「考え方のクセ」に優しく気づく

考え方や行動の「選択肢」を一緒に探して増やす

それによって、少しでも楽に、自分らしく生きられるようになる

そんな、自分自身を深く理解し、可能性を広げていくための、優しい伴走者のようなものだと、私は専門家として日々感じています。

◆ もし、もう少し話してみたいと感じたら


この記事を読んで、「認知行動療法について、もっと具体的に知りたいな」「私のこのモヤモヤも、何か関係があるのかな?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

あるいは、今、一人で抱えるには少し重たい悩みや、なかなか抜け出せない気分の落ち込みを感じている方もいるかもしれませんね。

そんな時は、どうぞ一人で抱え込まず、専門家の力を頼ることも考えてみてください。

『心理相談室ちゃのま』でも、認知行動療法を軸に、一人ひとりのペースに合わせた丁寧なカウンセリングを行っています。

「こんなこと相談してもいいのかな?」と思うようなことでも大丈夫です。安心して話せる場所を用意してお待ちしています。

もちろん、すぐにカウンセリングを、ということではなくても、まずは自分を知るための一歩として、認知行動療法の考え方に触れてみるだけでも、きっと新しい発見があるはずです。

無理に変えようとしなくていい。まずは、自分の心にそっと耳を傾けるところから、始めてみませんか?

【ご留意いただきたいこと】

この記事は、認知行動療法への理解を深めるための一助として書かれたものです。精神的な不調が続く場合や、専門的な診断・治療が必要だと感じられる場合は、医療機関(精神科・心療内科)への受診もご検討ください。カウンセリングと医療は、連携することでより良いサポートにつながることがあります。

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