心理相談室ちゃのまの杉田真也です。
最近「認知行動療法」という言葉を耳にする機会が増えた気がしませんか? ストレスとの付き合い方や、心のセルフケアに関心がある方なら、一度は聞いたことがあるかもしれませんね。
でも、「認知行動療法」と聞くと、なんだか「もっとポジティブに考えなきゃ!」とか「今の考え方は間違っているから直しなさい!」と言われるような、ちょっと厳しいイメージを持っていたりしませんか?
実は、これらはカウンセリングの現場でもよく耳にする「よくある誤解」なんです。
1. ポジティブ思考の押し付け?いいえ、そうじゃありません
認知行動療法の一番大切なポイントは、無理やりポジティブシンキングを強要するものではないということです。これは専門家としてまずお伝えしたいことです。
もちろん、楽観的な視点を持つことが助けになる場面もあります。でも、つらい時に無理に「大丈夫、すべてはうまくいく!」なんて思おうとしても、余計に苦しくなっちゃうことだってありますよね。
認知行動療法は「こう考えなさい!」と型にはめるのではなく、「今、自分はどんな風に考えているんだろう?」 と、ご自身の心の動きにまずは気づけるようになることを大切にします。自分の心の「観察者」になるようなイメージです。
2. 考えを変える? いいえ、「選択肢」を増やすんです
そしてもう一つ。「考え方を変えなければならない」というものでもありません。
私たちが何か出来事に遭遇したとき、無意識のうちに特定の考え方や反応をすることがありますよね。それは長年の経験の中で自分なりに身につけてきた、いわば「思考のクセ」のようなもの。
認知行動療法は、そのクセが良いとか悪いとかジャッジするのではなく、「もしかしたら、こういう考え方や捉え方もあるかも?」「こんな行動を試してみるのもアリかも?」 という、新しい選択肢(レパートリー)をセラピストと一緒に探していくことを目指します。
例えるなら、いつも使っている道が工事中で通れなくても、別の抜け道を知っていれば焦らず目的地に向かえますよね。それと同じで、考え方や行動の「引き出し」が増えることで、ストレスを感じる場面でも少しだけ楽になったり、しなやかに対応できるようになったりする。そんなお手伝いをするのが認知行動療法です。
3. 「認知の歪み」って言葉、ちょっと気になりませんか?
認知行動療法について調べていると、「認知の歪み(ゆがみ)」という言葉に出会うことがあります。なんだか「私の考え方は歪んでいるの?」とドキッとしたり、不安に感じたりしてしまう方も少なくありません。
実は、この「歪み」という表現はネガティブな響きから誤解を招きやすいため、専門家の間でも最近ではより丁寧な言葉で表現しようという動きが広がっています。
なぜなら、私たちが持っている考え方のパターンは、決して単純に「歪んでいる」「間違っている」と断定できるものではないからです。
それはむしろ、これまであなたが一生懸命生きていく中で、その時々で必要があって身につけてきた「考え方のクセ」や「思考のパターン」 言えるかもしれません。
- 周りの顔色をうかがうクセ: 過去の人間関係の中で、自分を守るために必要だったのかもしれません。
- 「きっと失敗する」と考えてしまうパターン: かつて大きな挫折から心を立て直すために役立ったのかもしれません。
このように、一つ一つのパターンにはその人なりの理由や背景があります。
ですから、単純に「歪み」と呼んで否定的に捉えるのではなく、「長年連れ添ってきた、自分なりのパターンなんだな」「あの時は、この考え方が私を助けてくれたのかもしれない」と、まずはその成り立ちに敬意を払い、理解しようとすることが大切です。
特定のパターンを悪いものと決めつけるのではなく、成り立ちを理解した上で、今の自分に合った新しいスキルを安全なペースで一緒に練習していく。そんなイメージを持っていただけると嬉しいです。
4. まとめ:自分を理解し、可能性を広げる旅へ
認知行動療法は、決して「こうあるべき」と押し付けるものではありません。
- 自分の「考え方のクセ」に優しく気づく
- 考え方や行動の「選択肢」を一緒に探して増やす
- それによって、少しでも楽に自分らしく生きられるようになる
自分自身を深く理解し、可能性を広げていくための「優しい伴走者」のようなものだと、私は専門家として日々感じています。
もし、もう少し話してみたいと感じたら
この記事を読んで、「認知行動療法についてもっと具体的に知りたいな」「私のこのモヤモヤも関係があるのかな?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
心理相談室ちゃのまでも、認知行動療法を軸に、一人ひとりのペースに合わせた丁寧なカウンセリングを行っています。
「こんなこと相談してもいいのかな?」と思うようなことでも大丈夫です。無理に変えようとしなくていい。まずは、自分の心にそっと耳を傾けるところから、始めてみませんか?
【ご留意いただきたいこと】
この記事は、認知行動療法への理解を深めるための一助として書かれたものです。精神的な不調が続く場合や、専門的な診断・治療が必要だと感じられる場合は、医療機関(精神科・心療内科)への受診もご検討ください。カウンセリングと医療は、連携することでより良いサポートにつながることがあります。