「断れない」がつらいときに

こんにちは。
臨床心理士・公認心理師の杉田真也です。

不安についての記事も、今回で13回目になりました。
今回は、人間関係における「断れない」というお悩みについて、一緒に考えていきたいと思います。

こんな経験はありませんか?


本当は疲れているのに、友人の誘いをOKしてしまう。
「できません」と言えず、職場で仕事を抱え込んでしまう。
気乗りしない集まりにも、無理に参加してしまう。

こうした「断れない」場面の積み重ねは、気づかないうちに心をすり減らしてしまいますよね。

今回は、なぜ私たちは「断る」のがこんなにも怖いのか。
その背景にある不安の正体と、気持ちを少し楽にする考え方をお話しします。

「断れない」の根っこにある不安


私たちが「NO」と言えないとき、その背景には様々な理由がありますが、代表的なものとして、心の中にある2つの不安が挙げられます。

1.嫌われることへの不安
「断る」ことが、まるで相手を拒絶するような行為に思えてしまう。
そして、そのせいで嫌われたり、関係がギクシャクしてしまったりするのを、私たちはとても怖く感じます。
この不安が、つい「YES」と言ってしまう大きな理由の一つです。

2.自分は冷たい人間だと感じる不安
「親切であるべきだ」と強く思っている人ほど、断ることに抵抗を覚えます。そして「断ってしまった自分は冷たい人間なのでは」と罪悪感を抱きやすいのです。

断っているのは「お願い」であって、人そのものではない


ここで大切なのは、「お願いを断ること」と「相手を否定すること」は別だと理解することです。

あなたが断っているのは、あくまで相手からの依頼やお誘いであって、その人自身ではありません。

「今回は都合がつきませんが、誘ってくれてありがとう」
「その仕事は引き受けられませんが、別の形でお手伝いできることはありますか」

このように、お願いされた中身は断っても、相手を大切に思う気持ちは伝えることができます。

この区別は、とても大切です。

なぜなら、私たちの頭の中では、つい「断る」という行為が「相手を拒絶し、嫌われること」に直結してしまいがちだからです。
そして、その考えが飛躍して、「断ることは、人間関係の終わりを意味するのではないか」という極端な思考につながってしまうこともあります。

「お願い」と「相手そのもの」を切り離して考えることで、この思い込みから少し自由になれるかもしれません。

自分も相手も大切にする伝え方


それでも、いざ断るとなると勇気がいりますよね。
そんなときは「アサーティブ」という、自分も相手も尊重する伝え方を意識してみてください。

  • クッション言葉を添える
    「申し訳ないのだけれど」「せっかく誘ってくれたのに、ごめんね」
  • 感謝を伝える
    「声をかけてくれて嬉しいです」「ありがとう」
  • 代替案を出す(可能なら)
    「今週は難しいけど、来週なら大丈夫」
    「その作業はできないけど、これなら手伝えるよ」

こうした工夫で、断ることへのハードルは少し下がります。

まとめ


「断る」ことは、わがままではなく、自分の時間やエネルギーを守るための大切な自己表現です。
あなたが自分を大切にすることは、結果的に相手との健全な関係を保つことにもつながります。

まずは、小さな頼まれごとを断ることから試してみましょう。「断っても、大丈夫だった」という小さな成功体験を一つずつ積み重ねていくことで、少しずつ気持ちが軽くなっていくはずです。

そうは言っても、長年のクセを変えるのは、一人ではとても勇気がいることです。
もし、「頭では分かっているけど、どうしても断れない」と一人で悩んでいらっしゃるなら、どうか無理をしないでください。

オンラインカウンセリング『心理相談室ちゃのま』では、そうしたお悩みにも、じっくりと耳を傾けます。どうすればあなたの気持ちが楽になるのか、具体的な伝え方などを一緒に考えていくこともできます。

いつでも、お気軽にお声がけくださいね。

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