不安と脳のアイドリング
こんな風に感じている方はいませんか?
「ベッドに入って横になると、今日あった失敗を何度も思い出してしまう…」
「電車でぼーっとしていると、いつの間にか心配事で頭がいっぱいになっている…」
考えたくないのに、ネガティブなことばかりが頭をぐるぐる巡ってしまう。
「どうして私は、こんなに考えすぎてしまうんだろう」と、自分を責めてしまうことはないでしょうか。
でも、実はこの"ぐるぐる思考"は、あなたの意志の弱さが原因ではありません。
脳に備わっている、ある"自動的な機能"がそうさせているのです。
今回は、この"ぐるぐる思考"の仕組みについてお話していきたいと思います。
"ぐるぐる思考"の正体は、脳のアイドリング
私たちが「何もしていない」「ぼーっとしている」と思っているときでも、実は脳は活動を続けています。
これを車の運転に例えるなら、エンジンを止めずに停車している”アイドリング状態”のようなものです。
車がガソリンを消費し続けるように、脳もエネルギーを使いながら、特定の思考パターンを自動再生しているのです。(専門的には、この脳の働きを"デフォルト・モード・ネットワーク"と呼ばれています)
この"脳のアイドリング"は、誰にでも備わっている、ごく自然な機能です。
なぜネガティブなことばかり考えてしまうのか?
では、なぜこのアイドリング状態のとき、脳は楽しいことよりも、過去の失敗や未来の心配といったネガティブなことを再生しやすいのでしょうか。
それは、私たちの脳にとっての最優先事項が"命を守ること"だからです。
これは、人類が厳しい自然環境を生き延びてきた中で培われた、大切な生存本能なのです。
脳は、私たちを守るために、
「過去の失敗(=二度と繰り返してはいけない危険)」を何度も反省会し、
「未来に起こりうる脅威(=これから避けるべき危険)」を何度もシミュレーションします。
つまり、あなたの頭の中で起きている”考えすぎ”は、意志の弱さのせいではなく、"脳が正常に安全運転をしてくれている証拠"とも言えるのです。
すこしおせっかいな気もしますね。
"脳のアイドリング"から抜け出す
そうはいっても、このぐるぐる思考にずっと付き合っているのは疲れてしまいますよね。
では、どうすればこのアイドリング状態から抜け出せるのでしょうか。
ヒントは、意識を「今、この瞬間」に向けることです。
脳のアイドリング状態は、意識が「過去」や「未来」に飛んでいるときに起こります。
その対極にあるのが、五感を使って「今、ここ」で起きていることに注意を向けている状態です。
車のアイドリングを止めて、アクセルを踏んで目的地に向かうように、私たちの脳にも「今やるべきこと」という意図的なタスクを与えてあげることが、ぐるぐる思考から抜け出すカギになります。
最後に
「考えすぎてしまう」のは、あなたのせいではありません。
それは、あなたを必死に守ろうとする、脳の自動的な働きです。
まずはこの仕組みを知ることで、ぐるぐる思考が始まったときに、「ああ、またおせっかいな脳がアイドリングを始めたな」と、一歩引いて客観的にながめられるようになるかもしれません。
では、このぐるぐる思考の中でも、過去のことばかり悔やんでしまう思考と、未来のことばかり心配してしまう思考には、どんな違いがあるのでしょうか。
次回は、このぐるぐる思考をさらに詳しく分解して、その特徴と付き合い方についてお話ししていきたいと思います。
そうはいっても、すでにぐるぐる思考に飲み込まれてしまっていて、耐えられないと思っていらっしゃる方は、オンラインカウンセリング『心理相談室ちゃのま』をお尋ねください。
いつでもお待ちしております。