こんにちは。
臨床心理士・公認心理師の杉田真也です。
不安の記事の12回目です。
さて、今回は人間関係における、こんなお悩みについてです。
- 会議で発言したいけど、「変に思われたらどうしよう…」と黙り込んでしまう。
- 頼み事を断りたいけど、「嫌われたくないから…」と、つい無理して引き受けてしまう。
- LINEを送った後、「この文章で相手を不快にさせなかったかな…」と、何度も見返してしまう。
このように、他の人からどう思われるかが気になりすぎて、自分の言いたいことや、やりたいことができなくなってしまう。そんな経験はありませんか?
他人の評価を気にし、顔色をうかがってしまうのは、とても疲れることですよね。
今回は、その苦しさを少しだけ軽くするための、心の整理の仕方についてお話しします。
なぜ、私たちは他人の評価が気になるのか?
そもそも、人間は社会的な生き物です。大昔から、仲間と協力しなければ生き延びることはできませんでした。そのため、「仲間から受け入れられたい」「嫌われて、のけ者にされたくない」という気持ちは、私たちの心に深く刻み込まれた本能のようなものです。
ですから、他人の評価が気になること自体は、決して悪いことでも、あなたが弱いからでもありません。ごく自然な感情なのです。
ただ、その気持ちが強くなりすぎると、他人の期待に応えることが自分の人生の目的になってしまい、自分らしさを見失って、息苦しくなってしまいます。
心を軽くする「課題の分離」という考え方
では、どうすればこの息苦しさから抜け出せるのでしょうか。
そのヒントとなるのが、「課題の分離」という考え方です。
これはとてもシンプルで、「自分にコントロールできること」と「自分にはコントロールできないこと」を、はっきりと分けて考える、というものです。
これを、人間関係に当てはめてみましょう。
- 「自分の課題」(=自分にコントロールできること)
- 相手に対して、誠実な態度で接すること。
- 自分の意見や気持ちを、丁寧に伝えること。
- 相手の頼みに対して、引き受けるか、断るかを自分で決めること。
- 「他人の課題」(=自分にはコントロールできないこと)
- あなたの言動を、相手がどう受け止めるか。
- あなたのことを、相手が好きになるか、嫌いになるか。
- あなたの行動を、相手がどう評価するか。
一番大切なポイントは、あなたがどんなに頑張っても、相手の心の中(感情や評価)まではコントロールできない、という事です。
あなたが誠心誠意プレゼンをしても、それを高く評価するかどうかは、聞き手である上司の課題です。あなたが丁寧に頼みを断っても、そのことで相手ががっかりするかどうかは、相手の課題なのです。
「自分の課題」にだけ集中してみる
この「課題の分離」ができるようになると、心がとても楽になります。
私たちは、コントロールできない他人の評価にエネルギーを注ぐのをやめ、自分にできること、つまり「自分の課題」にだけ集中すればよくなるからです。
「相手にどう思われるか」を基準に行動するのではなく、「自分として、どう振る舞うのが誠実か」を基準に行動するのです。
もちろん、これは「自分勝手に振る舞っていい」ということではありません。
自分の課題として、相手への配慮や丁寧な伝え方を最大限に行う。でも、その結果どうなるかまでは、相手に委ねる。この線引きが、健全な人間関係を築く上で、とても大切になります。
誰かに何かを伝えようか迷ったとき、「これは、誰の課題だろう?」と自分に問いかけてみてください。
他人の評価を気にしすぎるあまり、自分の気持ちを後回しにしていませんか。
誰かの期待に応えることばかりが、あなたの人生ではありません。
あなたはあなたのままで、価値がありますから。
少し勇気を出して、他人の課題と自分の課題を分けて考えることで、少しだけ気持ちが楽になるかもしれませんよ。