不安はずっと続かない
不安の記事第4回。
こんにちは、臨床心理士・公認心理師の杉田真也です。
前回の記事はこちら
強い不安に襲われると、「この不安が永遠に続くんじゃないか…」とさらに不安になってしまうことがあります。
でも、この不安には必ず”終わり”が存在します。
今回は”感情の時間的な性質”をもとに、不安に対しての心構えについてお伝えしていきたいと思います。
感情にはピークがある
喜怒哀楽といった感情は、ある意味では人間の”生理現象”です。
生理現象には必ず”山と谷”があります。
たとえば、100メートルを全力で走ったとします。
心臓は激しく鼓動し、呼吸は荒くなりますが、その状態がずっと続くことはありません。
しばらく休めば、心拍数も呼吸も必ず元の状態に戻ります。
不安や恐怖をはじめとする感情も、これと同じです。
脳の危険を知らせるシステムが作動すると、心と体の緊張が一気に高まり、胸が締め付けられるように苦しく、思考もまとまらなくなります。
これは本当に耐えがたい状態です。
しかし、大切なことは、感情の強度がピークに達したあとは、必ずその強さは下降していくということです。
我々の体は、ずっと緊張状態・興奮状態でいることはできません。
エネルギーが尽きれば、自然と落ち着いてくるのです。
不安と闘うことは逆効果
しかし、多くの人は、不安などの感情と闘おうとしてしまいます。
「不安になっちゃダメだ」
「こんな気持ちを感じてはいけない」
「早く落ち着かなければ」
といった具合に、心の中で感情を無理やり抑えつけようとしてしまいます。
でも、これはある意味、火に油をそそぐようなものです。
「不安になってはいけない」と考えれば考えるほど、かえって不安であることを意識してしまいます。
不安を消そうと努力することが、かえって不安なことを何度も思い出すことにつながってしまうのです。
また、「不安を感じることはダメだ」と考えることは、「不安は危険なものだ」と錯覚してしまいやすく、また「不安をなくせない自分はダメだ」と新たな不安を生み出してしまいます。
不安と闘うことは、本来なら自然に通り過ぎるはずの感情のピークをいつまでも越えさせず、苦しい状態をダラダラと長引かせてしまうのです。
ただ観察し、やり過ごす
不安などの感情が起きたときに、感情と闘ってはいけません。
自分の心と体で起きていることを、観察し、それが過ぎ去っていくことを待つことが大切です。
強い不安を感じ始めたら、次のように気持ちを整えてみましょう。
①感情に気づき、実況中継をしてみる
「ああ、今、自分は強い不安を感じているなあ」「心臓がドキドキしてきたな」という感じで、感情の実況中継をします。客観的に観察をすることで、不安と言う感情から、少し距離をとることができます。
②不安と闘わず、許可を出す。
「不安を感じてもいいんだ」「ドキドキしても大丈夫だ」と、今の感情や身体反応に許可を出してあげます。抑えられることがなくなるだけで、感情は早く収束していきます。
③時間がたてば不安が弱まることを体験する
「この感情は生理現象だから必ず弱まる」ことを頭に置き、自然に不安の強度が弱まっていくことを待ちます。その体験をすることで、脳がこの事実を学習し、不安を脅威と感じにくくなっていきます。
もちろん、これらは簡単なことではありません。
何度も練習が必要です。
でも、「この現象は一時的なものであり、必ず終わりがある」と知っているだけでも、冷静さを取り戻すことができるはずです。
それでも、おひとりで不安に立ち向かうことはとても勇気のいることです。
もし誰かのサポートが必要と感じられた方は、ぜひオンラインカウンセリング『心理相談室ちゃのま』をお尋ねください。
それでは、また来週の水曜日に。