「もしかして病気?」が頭から離れないときに ~健康不安との付き合い方~

こんにちは。
臨床心理士・公認心理師の杉田真也です。

不安の記事の14回目です。今回は、「自分の健康」に対する不安について、一緒に考えていきたいと思います。

消えない咳、ちょっとした胸の痛み、お腹の不調…。
そんな体のささいなサインに気づいたとき、心の中に「もしかして、何かの病気なんじゃないか?」という、もやもやとした不安が広がることはありませんか?

その不安を解消したくて、スマートフォンで情報を検索してみる。
でも、調べれば調べるほど、かえって怖い情報ばかりが目に付いて、不安がどんどん大きくなってしまう…。

今回は、なぜ私たちの心が、体のささいな不調を「重病のサイン」だと捉えてしまうのか、その心理的な仕組みと、不安のループから抜け出すためのヒントについてお話ししますね。

不安が身体感覚を鋭くさせるとき

健康への不安が強くなると、私たちの心の中では、主に3つのことが起こっています。

1.意識が、不調な部分に集中しすぎる
私たちの意識は、特定のものに集中する性質があります。不安を感じると、その意識が体の一部分に、ピタッと張り付いてしまいます。
すると、普段なら気にも留めないような、本当にささいな体の感覚、例えば心臓の音や胃の動きまで、異常なサインとして感じ取ってしまうことがあります。

2.最悪のケースに考えが飛躍してしまう
「少し咳が出る」という事実から、「もしかして肺がんかもしれない」という最悪の結論に、一足飛びで思考がジャンプしてしまうこともあります。
これは「破局的思考」と呼ばれる、不安なときにおちいりがちな思考のクセです。私たちの脳は、安全を確保するために、最悪の可能性を真っ先に考えようとすることがあるのです。

3.「安心するための行動」が、不安を長引かせる
「安心したい」という気持ちから、何度もネットで検索したり、いくつもの病院を訪ねたりする。これらの行動は、その瞬間は少しだけ安心できるかもしれません。
しかし、長い目で見ると、「常にチェックし続けないと、安心できない」という考えを、かえって強化してしまいます。安心を求める行動そのものが不安を維持させてしまうという、悪循環に陥ってしまうのです。

不安のループから抜け出すための練習

では、この苦しいループから抜け出すために、何ができるでしょうか。

1.注意を意識的に動かす練習
体の内側に向きすぎている意識を、体の外側に向けてみましょう。
例えば、椅子に座っているお尻の感触や、足の裏が床に触れている感覚に、じーっと注意を向けてみる。あるいは、窓の外の景色を細かく観察したり、聞こえてくる音に耳を澄ませたりする。
この「注意の切り替え訓練」は、過敏になった身体感覚から、意識を引き離す助けになります。

2.あえて「何もしない時間」をつくってみる
「今すぐ検索しないと、大変なことになる」という強い不安があるとき、行動を止めるのは怖いことですよね。
そこで、ほんの少しの時間だけ、「何もしない」ということを試してみるのはどうでしょうか。
例えば、「10分間だけは検索しない」と決めて、少し様子を見てみるのです。
10分経っても、何も恐れていたことは起こらなかった。
この「何もしなくても、大丈夫だった」という小さな体験が、とても大切です。この経験が、「今すぐ行動しなくてもいいんだ」という安心感を、少しずつ育ててくれます。

3.「体の良いところ」探し
健康不安が強いとき、私たちは体の「悪いところ」ばかりを探してしまいます。
その意識を、少しだけ「体の良いところ」「問題なく動いているところ」に向けてみます。

「今日も、ちゃんと歩いてくれた足」
「美味しいご飯を味わえた口」
「温かいお風呂が気持ちいいと感じる肌」

完璧な健康を目指すのではなく、「今の自分にできていること」に目を向けることで、過剰な不安から少しだけ距離を置くことができます。

自分の体を大切に思うからこそ、健康への不安は生まれます。その気持ち自体は、とても自然なことです。
しかし、その不安に心を支配され、日々の安心が奪われてしまうのは、本当につらいですよね。

まずは、情報で安心を得ようとするのではなく、自分の「注意の向け方」や「小さな行動」で、安心感を少しずつ育てていく。そんな視点を、持ってみてはいかがでしょうか。

そうはいっても、不安なことに一人でチャレンジするのは、とても勇気のいることです。

もしよろしければ、心理相談室ちゃのまで、不安との付き合い方を一緒に考えてみませんか?

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