シーン…とした「静かな時間」が苦手なあなたへ

こんにちは。
臨床心理士・公認心理師の杉田真也です。

不安の記事の18回目になりました。今回は、日常生活に潜む、こんな感覚についてです。

  • 一人で家にいると、何となくテレビや音楽をつけてしまう。
  • 会話がふと途切れたときの「シーン…」という沈黙が、少し気まずい。
  • 何もすることがない手持ち無沙-汰な時間が、どうにも落ち着かない。

このように、音や情報がない「静かな時間」に、居心地の悪さや漠然とした不安を感じた経験はありませんか?

今回は、なぜ私たちが「沈黙」が苦手だと感じてしまうのか、その背景にある心の仕組みと、静かな時間を少しだけ心地よく過ごすためのヒントについて、一緒に考えていきたいと思います。

なぜ、「静けさ」が苦手だと感じるのか?

常に音や刺激を求めてしまう背景には、私たちの脳の働きや、無意識の心の動きが関係していることがあります。

1.脳が「ぐるぐる思考」を始めやすいから
以前の記事でも触れましたが、私たちがぼーっとすると、脳は「アイドリング状態」になり、過去の後悔や未来の心配といった思考を自動的に始めやすい性質があります。
静かな時間は、まさにこの脳の働きが活発になりやすい状況です。私たちは、ネガティブな思考に飲み込まれるのを避けるために、無意識のうちにテレビやスマホなどの外部の刺激で、その時間を埋めようとしているのかもしれません。

2.本当の気持ちと向き合うのを、避けているから
騒がしさの中にいると、私たちは目の前のことに集中でき、自分の内面から少し目をそらすことができます。
しかし、静かになると、普段は意識しないようにしている自分の本当の気持ち(「このままでいいのかな…」という悩みや、言葉にならない寂しさなど)が、ふと顔を出すことがあります。
この、自分自身と向き合うという作業を、無意識に少し負担に感じているため、私たちは刺激を求め、自分との対話を避けているのかもしれません。

3.夜の静寂が、孤独感を強めるから
特に、夜寝る前の「シーン」とした静けさは、日中の喧騒とのギャップもあり、ひときわ際立って感じられます。
周りの世界は眠りについているのに、自分だけが起きている。その感覚が、「自分だけが一人ぼっちだ」という孤独感や、漠然とした不安を強くすることがあります。

静かな時間と、少しだけ上手く付き合うヒント

では、どうすればこの「静けさ」との付き合い方が、少し楽になるのでしょうか。
無理に変えようとする必要はありません。少しずつ、静かな時間に慣れていくための練習です。

1.まずは「1分間」から始めてみる
いきなり長い沈黙に耐える必要はありません。
まずは「1分間だけ、何もせず、ただ窓の外を眺めてみる」ということから試してみてはいかがでしょうか。
スマホもテレビも消して、ただ雲の流れや、木の葉の揺れをぼーっと眺める。その1分をどう感じたか、自分の気持ちに気づくだけでも、大きな一歩です。

2.「ながら聞き」をやめてみる
食事中や作業中に、BGMのようにテレビや動画を流すのを、一度だけお休みにしてみるのもおすすめです。
食事をしながら、食べ物の味や香りにじっくりと集中してみる。それだけで、普段とは違う豊かさを感じられるかもしれません。

3.夜、眠れないときは「音」を味方につける
「静寂が怖い」からといって、無理に静寂と戦う必要はありません。むしろ、自分にとって心地よい「音」を、積極的に味方につけてみましょう。

  • 単調な音を選ぶ: 川のせせらぎ、雨音、焚き火の音といった、いわゆる「環境音」や「ホワイトノイズ」は、心を落ち着かせる効果があると言われています。
  • 言葉のない音楽を聴く: 歌詞があると、つい意味を考えてしまいます。穏やかなインストゥルメンタルの曲や、クラシック音楽などが向いているかもしれません。
  • 人の声が安心するなら: ラジオやポッドキャストも有効です。内容が頭に入らなくても、ただ人の声が聞こえているだけで、孤独感が和らぎ、安心して眠れることもあります。

大切なのは、「完全な無音」を目指すことではありません。
あなたにとって、「これなら安心して眠れる」という、お守りのような音を見つけることが、夜の不安を和らげる助けになります。

常に情報や刺激に囲まれている現代だからこそ、意識的に「何もない時間」を作ることが、心を休ませ、整えるために、とても大切になります。

静かな時間は、あなたを罰するためにあるのではありません。
それは、自分自身と静かに対話するための、かけがえのない時間かもしれません。

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