不安の身体症状と、応急処置

今週もご覧くださってありがとうございます。

臨床心理士・公認心理師の杉田真也です。

前回の記事はこちらです。

今回は、不安が高まり過ぎたときに体に現れる症状はどんなメカニズムで起きているのかについて解説していきたいと思います。

また、そんな症状が出てきたときの応急処置についても触れていきます。

突然の身体症状


たとえば、「人前で発表をするときに急に心臓がバクバクして息が苦しくなった」「電車の中で、急にクラクラして倒れるかと思った」「学校や会社に行こうと思ったら、急に腹痛や吐き気、下痢が起き始めた」といった経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのとき、「心臓の病気?」「このまま意識を失ったらどうしよう」「食中毒かもしれない」というように、さらに不安が増大してしまうかもしれません。

しかし、これらは自分を守ろうとする正常な反応であることが多いのです。

体はどんな風に反応している?


以前の記事で、不安は脳が危険を察知して鳴らす”警報機”のようなものであり、体は「闘うか、逃げるか」の準備を始めていることをお話ししました。

身体症状は、この準備の現れなのです。

○動機・息切れはなぜ?

これは危険から逃げたり、闘ったりするために、筋肉にたくさんのエネルギー(酸素や血液)を送り込む必要があるからです。心臓は体にどんどん血液を送り出すために激しく動き、肺は必死に酸素を取り込もうとします。これが動機や息切れの正体です。ブースト機能のようなものと言えるかもしれません。

○めまい・ふらつきはなぜ?

上記のように呼吸が速くなったとき、体が酸素を取り込みすぎ、逆に必要以上に二酸化炭素を出しすぎてしまうことがあります。血中の二酸化炭素には、実は脳の血管を広げて血流を適切に保つ働きがあります。その二酸化炭素が減ってしまったことで、脳の血管がキュッと縮んでしまい、脳に十分に血流が届かず、脳が一時的に酸欠のようになってしまいます。これにより、めまい、ふらつき、頭がぼーっとする、目の前がチカチカするといった症状が出てきてしまいます。

○腹痛・吐き気・下痢はなぜ?

ライオンに襲われそうなシマウマをイメージしてください。シマウマの脳は、逃げるために心拍数や呼吸数を上げてブーストがかかっている状態です。そんなとき、脳は「食べ物を消化してる場合じゃねえ」と考えます。また、「食べたものをさっさと出して、体を軽くしよう」とも考えます。この合理的な発想が、不安や恐怖を感じた人間にも起こっているのです。
他にも、消化管への血流が低下したり、腸が痛みに敏感になったりすることも影響しているようです。

自分でできる応急処置


症状そのものは、命を脅かすような危険性はありません。

それよりも「この症状は危険だ」と考えることが、更なる不安を呼び起こしてしまうのです。

この悪循環を断ち切るために、3つの応急処置をお伝えします。

①正常な反応であることを思い出す

心の中で「これは不安のサインだ」と、ここで読んだことを思い出してください。「危険なものではない」「命に別状はない」と思い返すことで、冷静さを取り戻す助けになります。

②息を”吐く”ことに集中する

不安な時は、息を”吸う”ことにばかり偏りがちです。それよりも、息を”ゆっくり、長く吐く”ようにしてみてください。肺にたまっている空気を、全部吐き切ることが大切です。

③意識を外に向ける

心臓や呼吸が激しくなったり、頭がクラクラしたりすると、ついそこにばかり意識を向けすぎてしまいます。そうすると、「このまま不安が続いてしまうのではないか」「このままどうにかなってしまうのではないか」と、先のことを考えて、さらに不安が増大していきます。そこで、今、自分の周りにあることに意識を向け直します。
たとえば…
・目に見える青いものを3つ探してみる
・どんな音が聴こえるか、耳をすましてみる
・冷たい壁にふれて感触を確かめる
・飲み物を味わってみる
などなど。五感に意識を向けてみることが、手軽で実行しやすいと思います。


いかがでしょうか。

過呼吸やパニックとまではいかなくても、不安に支配されて体調が悪くなってしまったとき、今回の記事を思い出していただけると幸いです。

なお、不安の出方は本当に人それぞれです。

おひとりで対処することが難しいと感じられたら、是非ともオンラインカウンセリングの『心理相談室ちゃのま』をお尋ねください。

しっかりとお悩みをきき、対処方法を一緒に考えていきます。

それではまた来週。

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